Goyard Club >> 賛同者&ファン >> 東野 hobo ひろあき

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“ギャグマニア〜思わずにんまり〜”
アメリカ映画でさりげなく、
アメリカンTVドラマで堂々と、
時には「さぁ、どうだ、笑え!」とホットに、
またある時には「わかるかい?」とクールに、
観る者のハートをくすぐるギャグの数々。
超有名なものから、見逃しがちなものまで、
まるで巨大スーパーで、どでかいカゴに
どんどんと商品を放り込むように、
ためらいなくコレクションしていきます。


♯3『ルーシーがいっぱい!』
  (from“ラットレース"1992)

「とにかく笑わせたいんだ!」そんな心の叫びが、観る者の魂にまで届いて来ることがあります。
ラブロマンスの中にちょっと薬味としてジョークが盛り込まれていたり、歴史大作の隙間に少しまぶしてあるような、生ぬるいものではなくて、全編を通して、ギャグシーンか、あるいはギャグにつなげるためのシーンしかない、というような映画。
そんな作品を堪能したいなら、冒頭で書いた“とにかく笑わせたい”病の監督の手による映画を選べばいい。そして、その筆頭が、ザッカー兄弟とファレリー兄弟でしょう。
くしくも、共に、兄弟それぞれが監督と製作をするというスタイルですが、コメディの作風は根本的なところで違います。
ファレリー兄弟の方は、明らかに、異形や不具者を真っ向から扱って、笑いの素にするところがあります。『ひとりの男とひとりの女』(主演-ジム・キャリー)では小人をネタにし、『愛しのローズマリー』(主演-ジャック・ブラック、グウィネス・パルトロー)では肥満を逆手に取り、そして、『ふたりにクギづけ』(主演-マット・デイモン、グレッグ・キニア)では、なんとシャム双生児を主人公にしてしまうという、ある意味、不敵なアプローチ。
しかし、日本人が感じる“差別感”はまったくなくて、むしろ、そんな人たちが微笑ましく思えて来るのが凄いところ。(何せ、『ふたりは』の主人公のシャム双生児を、あの『ボーン・アイデンティティー』のマット・デイモンが嬉々として演じてるわけですからね。うまく言えば「社会のタブーに挑戦する」っていうトンガッたスピリットなんでしょうか。この感覚って、きっと日本人には理解出来ないものなんでしょう。だって、その役を、たとえばオダギリ・ジョーや中村獅堂がやるとは思えませんから。この国ではありえないんですよね、『倫理的』に。)
さて、前置きが長くなりました。先に上げた、ファレリー兄弟の作品については、近いうちに書くことになるでしょう。
今回は、一方のザッカー兄弟の手による、ギャグ・ムービーの神髄、『ラットレース』についてです。物語は実に単純。ラスベガスに遊びに来た男や女や家族が、とある男から「ここから約1000キロ先の町-シルバーシティの駅のロッカーに大金が入ってる。早く着いて、それを手にした奴にその金やるよ。」と持ちかけられ、全員一斉にそこを目指す、というもので、実は、大金持ちの男たちがそれを「誰が勝つか」という“賭け事ごっこ”の駒にしているというお話。
難しい理屈は何もないから、ただただ、マシンガンのように繰り出されるギャグを満喫していればいいという寸法で、ボクはこういうの大好き!世の中に、こんな映画ばかりでもいい。マジで。
そのキャストたるや、モンティ・パイソンのキーパーソンであるジョン・クリースを芯に据えて、顔見れば「あぁ、この人かぁ」と日本人にも知られているコメディ俳優-ジョン・ロヴィッツ、“Mr.ビーン”のローワン・アトキンソンに、若手コメディアンの雄-セス・グリーン、実はコメディエンヌ-ウーピー・ゴールドバーグなどなど。特に、キューバ・グッディング・Jrなんかがきっちりとおバカコメディ演技しているところが憎いのです。
そのレースに勝とうと、ある者は車で、ある者は飛行機で、またある者は電車で、気球で、とゴールを目指す中、何をやってもツイテない男がこのキューバ・グッディング・Jr扮する“ダメダメマン”。
荒野の砂漠にひとり取り残され、裸足の足の裏が「熱っ熱っ!」と飛び跳ねるというような、ベタなシーンの連続で見終わった後の印象大。特に、ボクがお勧めなのは、荒野で移動のすべをなくした彼の前に一台の観光バスが現れてからのくだり。彼としては、当然、そのバスを乗っ取って、ゴールを目指そうとするわけで、運転手がトイレ休憩に降りた際に、手荒く出迎え、制服をはぎ取って変身し、「ここからは私が運転します。」とバスに乗り込む、、、んですが、乗っている人たちを見ておったまげる!そこには、皆、同じメイクと衣装の女たちがいて、飛び切りの笑顔で彼にごあいさつ。実は、それは、かつてのアメリカを代表するTVコメディ『アイ・ラブ・ルーシー』のルーシー・ファンを乗せたバスだったというわけ。一同、ルーシーのコスプレをしているんですね。それからは、同じ格好をしている女たちというだけで、もう何をやってもおかしいし、その場面が、他の白人俳優のためのものではなくて、他ならぬ黒人俳優であるキューバ・グッディング・Jrが遭遇するドタバタシーンというところに、またチクリとした人種意識もかいま見えます。(結局、、黒人男が、白人女たちに振り回されるという意味で。)
もちろん、頭のてっぺんからシッポの先までギャグの玉手箱のような作品ですから、キリがないのでもうやめておきます。百聞は一見にしかず、ぜひメイド・イン・ザッカー兄弟のコメディを満喫して下さい。
最後に、賭け事のコマにされている男や女たちを「ラット」と言っているようでありながら、実のところ、そんなレースを賭け事にして一喜一憂している金持ちたちこそが「ラット」だという風刺も効いていて、損をしない一本です。

ラットレース (2001)
RAT RACE
112 分/アメリカ/コメディ

監   督 ジェリー・ザッカー Jerry Zucker
製   作 ショーン・ダニエル Sean Daniel
ジャネット・ザッカー Janet Zucker
ジェリー・ザッカー Jerry Zucker
製作総指揮 ジェームズ・ジャックス James Jacks
リチャード・ヴェイン Richard Vane
脚   本 アンディ・ブレックマン Andy Breckman
撮   影 トーマス・E・アッカーマン Thomas E. Ackerman
音   楽 ジョン・パウエル John Powell


出   演 ローワン・アトキンソン Rowan Atkinson
…エンリコ・ポリーニ
ジョン・クリーズ John Cleese
…ドナルド・シンクレア
ウーピー・ゴールドバーグ Whoopi Goldberg
…ベラ・ベイカー
キューバ・グッディング・Jr Cuba Gooding Jr.
…オーウェン・テンプルトン
ブレッキン・メイヤー Breckin Meyer
…ニック
ジョン・ロヴィッツ Jon Lovitz
…ランディ
セス・グリーン Seth Green
…ドウェイン
キャシー・ナジミー Kathy Najimy
エイミー・スマート Amy Smart
ディーン・ケイン Dean Cain

文・写真/東野hoboひろあき