Goyard Club >> バックナンバー >> 10 cups「モノ」vol.11

 


感謝!

編集後記“one cup of coffee”改め
「10 cups of coffee」


Vol.11『髑髏(しゃれこうべ)のPill Box』


 基本的に男はドクロ好きが多い。目を閉じ、口をあんぐり開けて小学生の頃を思い出してほしい。理科室に骨格模型が置いてあったよね。その脇には不気味な人体模型もあったよね。
 ※お願い。以下、Xプロジェクト風に読んでください。
 西日のあたる校舎の一角に理科教室がある。その教室を守る男がいた。名前は頭蓋骨雄(ずがいほねお)といった。
 頭蓋の存在はその容姿からして、男子生徒からは畏敬を、女子からはキモチ悪いの念を与えていた。
 頭蓋の人なりを表す貴重な数字がある。男女比が著しく偏っていた。
 96%の男子が彼を支持し、女子はわずか3%。残りの1%が無性別系の生徒だった。
 男子は頭蓋を見かけると、挨拶がわりに親しみをこめて、頭蓋の後頭部を強く平手打ちした。
 アゴ部分をガクガクさせ、嫌がる女子の手を入れ、噛みつかせ、揚げ句の果ては、タバコをくわえわせた不届き者もいた。
 いじくり過ぎてあごのバネがはずれ、ブラブラ状態で放置され、突っ立つ頭蓋は哀れだった。
 頭蓋骨雄は何一つの文句も言わなかった。
 ただ寡黙に突っ立っていた。それが仕事と心得ていた。
 「高倉健」と似ている、と頭蓋は思った。
 それから数十余年、頭蓋は悪友Kとめぐり逢った。
 Kからみた頭蓋は、たいそう出世していた。彼は理科室からイギリスに帰化し、かなり地道な功績(永年突っ立ち業)が認められていたのだ。
 誰もが嫌がる仕事に孤高と向かう頭蓋の姿が、海を越えてイギリスの人々の心をつかんだ。
 頭蓋がプラスチックからスターリングに推挙抜擢するのを反対する者はいなかった。
 頭蓋の栄誉はホールマーク(刻印)※として深く刻まれた。
 このマークを読み取れば、出身地から生まれた年まで分かる。
 頭蓋骨雄は長年奉公したロンドンの歯科医のもとを離れ、今はKのもとで重要な仕事を任されている。
 常備薬の保全と管理運営が頭蓋の役目となった。
 1錠をくわえておき、Kに取りやすくすることだ。繊細な動きを要求されるが誇りもある。
 古くからピル・ボックスの素材に「銀」が多く用いられるのは、毒消しの効果がみとめられるゆえんである。
 頭蓋の輝きは今も失われていない。
 ※以上、Xプロ風の読み方終わりです。
 ところで満2周年を迎えました我がGOYARD CLUBも、頭蓋骨雄君のように、輝きをいつまでも失わず「耳から手を突っ込んで奥歯をガタガタ言わせたるで」(C)てなもんや三度笠、のようなインパクトのある内容をお届けする事をお約束します。

ホールマーク(刻印)※
 このピルボックスはホールマーク(製造者、純銀度、検定所、製造年)により、ライオンマークは、銀92.5%製(スターリングシルバー)豹の顔は、ロンドン検定所、Hは1982年、DABは工房名。つまりロンドン地方にあるDAB工房にて1982年にシルバー925を使って作られたケースであることが分ります。購入した時は知識が無く、これは1892年のものと言われた。アジャパ。

G事局長/小森 秀峰

[最新の10cupsへ戻る]

バックナンバー集のトップへ戻る